なぜロシア軍のウクライナ侵攻は、こんな惨めな始まり方をしたのか、そして今後は。

以後、二つの文章の翻訳を掲載する。どれも元々はロシア語で書かれたもので自分にはロシア語の知識はゼロなので、ロシア語を英訳したものを日本語に訳するという迂遠な経緯を得て文章となっている。

一つ目は、文字通りロシア語をGoogle翻訳を使って英訳し、その後和訳したもの。二つ目は、ロシア語の論文を英訳した海外のサイトの文章を和訳したもの。したがって一つ目よりは二本目の方が自然な日本語になっている。

一つ目の文章は、twitterでも話題になっていた今回のウクライナ戦争に関して、ロシア連邦保安庁の職員が内部事情を暴露したとされるもの。正直な話、最初はfakeかとも思ったがかなり信用のできるBellingcatという調査報道を得意とするネットメディアの編集者が自分自身のインフォーマントのロシア連邦保安庁の職員2名に確認したので信用性がましたのと、本日、The Timesが同じ情報をもとに記事にしたので、大丈夫かなと思って自分の訳を公開したいと思う。

もう一つは、これは上の訳と対比すると非常に面白いのだが、ロシア軍事情報専門の英語ブログで紹介された、今年1月終わりか2月初めにロシアの軍事専門誌に投稿されたロシアの元将官が噂されるウクライナ侵攻を批判した論考。いま読むとまるで予言かと思う正確さ。両方を読むと、現在のロシアの指導部の非常に恐ろしい状況がわかってくる。

 

どちらも非常に長いが読みでがある。

 

18年以上 ロシア連邦特務機関の内部情報提供者の一人の証言を編集・検閲なしで公開します。 これは地獄ですから。

「すべて正直に言いう。私はここ数日、ほとんど眠っていない、ほとんどすべての時間を仕事で、私の頭は、霧の中にいるように少し浮ついている。過労のせいで、まるですべてが現実ではないかのような状態に陥っていることもある。

正直言って、パンドラの箱が開けられた。夏までには本当の世界的恐怖が始まるだろう。世界的飢饉は避けられない(ロシアとウクライナは世界の穀物の主要供給国だったが、今年の収穫は少なく、物流の問題で大惨事はピークに達するだろう)。

上層部が何を基準にこの作戦を決定したのか、私にはわからない。

しかし、彼らは今、我々(サービス)を的に計画的にすべての犬を放っている。

我々は、我々の提供した分析について怒りをかっている。これは私のプロファイルに非常に近いので、何が問題なのかを説明する。

最近、我々は上層部の要求に合わせてカスタマイズ化されたレポートの提出を求められていた。私はかつてこの話題に触れたことがありますよね。

 政治コンサルタント、政治家とその部下、影響力のあるチーム - これらすべてがカオスを生み出した。それも強いカオスを。

何より、こんな戦争が起こることを誰も知らされなかった、隠されていたのだ。

例えば、刑務所が隕石で攻撃された場合など、様々な状況下で国益が守れる可能性を計算するように(条件付きで)言われる。

そこで隕石について詳細を聞く。そうすると、このシュミレーションはただ、稔のための保険だ、実際にはこんなことは起こらない、と言われる。

報告書の作成は見せかけだけだとわかった。ただ、それだとしても上手くいく報告書でないと、なぜこんなに問題があるのか、本当に最善をつくしたのか、と疑問を持たれないように、全てが上手くいくと勝ち誇ったように書かなければならない。

こうして全般的に、隕石が落ちてきたときに、その影響を排除するために我々はすべての手段を持っている、我々は素晴らしい、すべてうまくいっている、という報告書が書かれているのだ。

 で、その後現実的な日常のタスクに集中する。ただでさえ余力が足りない。そしたら、突然隕石が落ちてきて、ブルドーザーに追われて急いで書いた分析報告書の結果通りになることを期待されるのだ。

だから、我々は総体的にピゼットを抱えているのです(ここは意味不明)。同じ理由で経済制裁からの保護もない。まあ、ナビウリナは過失を責められることは十分あり得るが(むしろ彼女のチームの誰かに責任転嫁)、上層部は何を責めるのか?こんな戦争が起こるなんて誰も知らなかっただから、こんな経済制裁の準備なんて誰もしてない。これは秘密保持の矛盾で、誰も教えてくれなかったのだから、誰も教えてくれなかったことを誰が計算できるのだろうか。

 

カディロフ[注:ラムザン・カディロフチェチェン軍閥。今回の作戦で、配下の部隊はゼレンスキー大統領暗殺の役割を担っていたと言われている]が怒り狂っている。ほとんど我々と紛争寸前までいった。おそらくウクライナ人たちも、作戦の最初の日にカディロフの特殊部隊のルートを漏らしたのは我々であるという偽の情報を投げかけたのでしょう。

彼らは行進中にひどい方法で襲われてしまった。彼らはまだ戦い始めていないうちに、いくつかの場所では文字通り引き裂かれていました。

 

そして、我々に責が行く。ウクライナ側に経路をリークしたのはロシア連邦保安庁である。私はそのような情報を持っていないが、私はその可能性を1-2%を残している(完全に排除することはできまない)。

結局、電撃戦は失敗した。今、任務を完了することは単に不可能なのだ。もし、ゼレンスキーとウクライナ当局が最初の1-3日で捕えられ、キエフのすべての重要な建造物を押収し、彼らに降伏命令を出したら-そう、抵抗は最小値まで沈静化しただろう。理論的にはね。しかし、その次は?この理想的な想定でも、解決できない問題があった。誰と交渉するのか?ゼレンスキーを取り除いたとして、さて、誰と協定を結べばいいのか。

もしゼレンスキーと協定を結んだのなら、その後で彼を取り除いたのなら、結局この協定には何の価値もない。HLE(ウクライナの親ロシア派野党)は我々との協力を拒否した。

メドベチュクは臆病者で、逃げてしまった。第二のリーダー、ボイコがいるが、彼は我々との協力を拒否している。上層部はツァレフをもどそうとした。だが、親ロシア派も彼に反発した。ヤヌコビッチを戻す?

しかし、どうやって?占領が不可能だと言うなら、我々が設立した政府関係者の誰もが我々が去って10分以内にそこで殺されるだろう。占領?

どこにそんな人員がいるんだ?司令部、憲兵隊、防諜、警備......現地の抵抗を最小限に抑えたとしても、50万人以上は必要だ。補給体制は別としてね。

そして、管理の質の低さを量でカバーすると、すべてを台無しにするだけという法則がある。

そしてこれは、繰り返すが、理想的な想定となった場合であり、それは存在しない。

ではどうすればいいのか?2つの理由から総動員を発表することはできない。

1)大規模な動員は、政治的、経済的、社会的な国内の状況を悪化させる。

2)現在、我々の兵站はすでに手一杯である。総動員したら何倍もの人員を駆り立てることになり、何が得られるか?

 

ウクライナは領土の点では大きな国である。その上今、我々に対する憎悪のレベルは天井知らずに上がっている。

 

このような物資の輸送に我々の補給が対応できず、すべてがストップしてしまう。そして、我々は単純にそれを遂行できない。なぜなら、全てカオスになるからだ。

その上、このうちの一つが生じるだけで全てを台無しにできるのに、二つが同時に生じるのだ。

 

損失。何人いるのかわからない。誰も知らない。最初の2日間はまだ統制が取れていたが、今は誰もそこで何が起こっているのかわからない。通信で大規模なユニットを失うこともある。発見されることもあれば、攻撃されて解散することもある。そしてそこでは、司令官でさえ、何人が近くのどこかを走り回っているのか、何人が死に、何人が捕虜になっているのかを知らないかもしれない。死者の数は間違いなく数千人だ。1万人かもしれないし、5千人かもしれない、あるいは2千人かもしれない、司令部でもはっきりしたことはわからない。しかし、1万人に近いはずだ。

それにこれにはドネツク・ルハンスクの部隊の損失を含めていない。彼らは自分たちの独自の集計方法を持っているから。

今、ゼレンスキーが殺されても、捕虜になっても、何も変わりない。

我々に対する憎悪という点では、チェチェンと同じレベルになっているからだ。そして今、我々に忠誠を誓った者たちでさえも、我々に背を向け始めた。

なぜなら、これは上層部が計画したことであり、我々が攻撃されない限り、そのような選択肢はないと聞かされていたからだ。

なぜなら、正しい条件で平和的に合意するためには、最も信頼できる脅威を作り出すことが必要だと説明されたからだ。

なぜなら当初、ウクライナ国内でゼレンスキーに対する抗議行動に対応するための準備しかしていなかったからだ。

我々が直接的に介入する可能性は取り除けられていた。

さらに今後、民間人の損失は指数関数的に増大する--そして、我々に対する抵抗も増大するばかりだ。侵入部隊はすでに歩兵で都市に入ろうとした。20の侵入グループのうち、条件付きの成功を収めたのは1つだけだ。モスルへの攻撃を思い出して欲しい。結局、これが原則で、どの国でもあっても、何も新しいことはないんだ。

包囲を続ける?ここ数十年の同じヨーロッパでの軍事紛争の経験によると(セルビアはここでの最大の実験場だ)、都市は何年も包囲下にあることができ、さらに機能する。ヨーロッパからの人道的輸送隊は時間の問題である。

6月までという条件付きで期限を決めている。条件付きというのは、6月には経済が何も残っていない、何も残っていないということなのだ。

大体、来週にはどちらかの側に転機が訪れるだろう。

このような過度な緊張状態を強いられる状況はどちらにとっても、ありえないからだ。

分析はない - なぜなら混乱を計算することは不可能であるから、ここに至っては誰も確かに何かを言うことはできない。みな直感的に、さらには感情で行動する - しかし、これは普通のポーカーではない。突然いくつかのオプションが発生することを期待して、掛け金が上昇する。問題は、我々も計算を誤り、一手ですべてを失う可能性が出てきたことだ。

大体、この国には出口がない。可能性のある勝利の選択肢がないだけで、敗北がすべて、これだけだ。

前世紀の初めに、弱い日本を蹴散らして手っ取り早く勝利を得ようと考えたら、軍隊が大変なことになっていた、ということを100%繰り返している。そして、最後まで戦争を続け、ボルシェビキを軍隊に「再教育」するために受け入れた。何しろ、彼らは大衆の誰にとっても興味のない、はみ出し者だったのだ。

そして、誰もよく知らないボルシェビキ反戦スローガンを掲げて、全てこんな風に始まったんだ.

まずは良い報告から:前線に「懲罰部隊」を大量に送り込むような案が少しでも通らないように、あらゆる手を尽くした。軍隊に囚人や「社会的に信頼できない」政治犯を送ると(国内の水に朱が交わらないよう)-軍隊の士気はただただマイナスになるばかりだ。そして、敵は士気に満ちている、ひどく士気に満ちている。彼らは戦い方を知っている、十分な中堅指揮官がいる。武器もある。支援もある。

 我々は、単に世界史上の人的損失の前例となるであろう。それでおしまいだ。

最も恐れていること:トップは、古い問題を新しい問題を覆い重ねて隠すという規則に従って行動することだ。

大きくはこのような理由で、2014年のドンバスが始まった。クリミアでのロシアの春の話題から欧米人の注意をそらす必要があったので、ドンバスの危機は、すべての注意を自分に引きつけて、交渉の対象とするためだったようだ。

しかし、さらに大きな問題があった。

エルドアンを4本のパイプ「サウスストリーム」に押し込むことを決め、シリアに介入したのだ。

ソレイマニが問題解決のために意図的に偽の情報を与えた後のことである。その結果、クリミアの問題は解決できず、ドンバスの問題もあり、「サウスストリーム」は2本に縮小し、シリアは別の頭痛の種をぶら下げた(我々がシリアを出ればアサドが排除され、我々は馬鹿を見るが、このまま居座り続けるのも難しいし、無意味だいうことだ)。

誰が「ウクライナ電撃作戦」を思いついたのか知らないが。もし、本当に初期情報を得ていれば、少なくとも当初の計画には賛否両論があること、多くの再確認が必要であることを示しだろう。いろいろとね。

今、我々は首から上の部分にまで糞で埋まっている。

そして、何をすべきか、明らかではない。「非ナチ化」や「非軍事化」は分析的なカテゴリーではない。なぜなら、任務の達成度や未達成度を判断するための明確なパラメーターが存在しないからだ。

あとは、どこかのクソ顧問が、制裁の軽減を要求するヨーロッパとの紛争を始めるよう、トップを説得するかどうかだ。

軽減か、戦争か。

もし彼らが拒否したら?1939年のヒトラーのように、本当の国際紛争に巻き込まれる可能性は否定できない。そして、我々のZは鉤十字と比較されることになる。

局地的な核攻撃の可能性はあるのか?はい、あります。軍事的な目的ではなく(全く意味がない。これは防衛の突破口となる武器だ)、他者を威嚇する目的で。同時に、すべてをウクライナに向ける土壌が整いつつある。ナリシキンと彼のSVRは今、そこで密かに核兵器を作ったことを証明するために、土地を掘り返している。

くそっ、彼らは今、我々が長い間研究し、解体してきたものを叩いているのだ。ここに膝をついて証拠を作り上げることはできないし、専門家やウランの存在(ウクライナには劣化した同位体238がたくさんある)は何の意味もないのである。生産サイクルがあるため、気づかないうちに行うことはできないのだ。「ダーティ」な爆弾さえも気づかれずに作ることはできない。しかし、彼らの古い原子力発電所では兵器級のプルトニウムを生産できる(REB-1000のような発電所では、反応の「副産物」として微量に生産する)ため、アメリカはIAEAの関与のもと、コントロールのため監視を導入したのです。

この話題を掘り続けるのはアホらしい。

我々は空腹の90年代を懐かしく思うくらいに、経済制裁が我々を覆いつくすでしょう。

金融取引が止まっている間、ナビウリナは通常のステップを踏んでいるように見えたが、それはすべてダムの穴を指でふさぐようなものだ。それでも突破され、さらに強くなる。3日後、5日後、10日後、何も決まらない。

カディロフが蹄を打つのには理由がある--そこには自分たちの安全がかかわるのだ。

彼は最も影響力があり、無敵であるというイメージを自分のために作り上げた。

そして、それが一度でも崩れれば、自らの民衆によって倒されることになる。彼はもはや、常勝者という称号の持ち主ではなくなるのだ。

さらに進めよう。シリアを。"奴らは持ちこたえるだろう、ウクライナで全てが終わる-そしてそこでシリアで我々は再び全てのポジションを強化する"

そして今、彼らはいつでも、部隊が資源を使い果たす瞬間をそこで待っている。

熱はいつでも発生することができる.トルコは海峡を封鎖している。飛行機でそこに物資を輸送するのは、お金でオーブンを加熱するようなものだ。

このすべてが同時に起こっていることに注目して欲しい。すべてを一つの山にまとめる時間さえないのだ。1943年~44年のドイツのような状況になっている。まだ始まったばかりなのに。過労で疲れ切り、すべてが夢であったかのように、思えてすべてが以前のように戻ると夢想することがあります。

ちなみに刑務所は、もっとひどいことになる。血が出るまでネジが締め付けられ始めるだろうから。どこでも。正直なところ、純粋に技術的に、これは状況を維持するための唯一の方法だ - 我々はすでに総動員のモードになっている。しかし、そんな体制で長くはいられないし、タイミングもあいまいで、当面は悪くなる一方だろう。動員から、指導部は必ず迷走する。そう、そして想像してみてください、全力で100メートル走れるのに、マラソンの距離まで行って思いっきりスピードを出すのはまずいですよね。ウクライナの問題で、まるで百メートルを走るように準備し、実際にはクロスカントリーのマラソンを走っていることに気づいたのだ。

今起こっていることをごくごく簡単に言ってみた。皮肉なことに、私はプーチンが全世界を破壊する赤いボタンを押すとは思っていないことを付け加えておく。まず、判断する人が一人以上いるので、少なくとも誰かがその判断から降りるだろう。

そして、そこには大勢の人が関わっている。「赤いボタンを持つ一人の男」は存在しないのだ。第二に、そこですべてがうまく機能しているかどうか、疑問がある。経験上、透明性と管理性が高ければ高いほど、欠点がわかりやすくなる。そして、誰がどのようにコントロールしているのかがはっきりしないのに、いつも威勢のいい報告がなされるところ-そこでは、すべてがいつも間違っているのです。赤いボタンのシステムが宣伝通り機能しているかどうかはわからない。さらに、プルトニウムの装荷は10年ごとに変えなければならない。

第三に、これは最も下劣で悲しいことですが、個人的には、連邦評議会のメンバーではなく、最も近い代表者や閣僚を自分に近づけさせない人の、自分を犠牲にする覚悟があるとは思えない。コロナウイルスや攻撃を恐れてなのか、それは問題ではない。最も信頼できる人を近づけるのが怖いのなら、どうやって自分や愛する人を全面的に滅ぼす勇気があるのだろうか。何かあれば - 尋ねてください、しかし、私は数日間答えることができません。急ぎモードで、タスクがどんどん増えています。

 

このGulagu.netのソースは、これまで悪態をついたことはなく、短く、ポイントを押さえて書いていました。しかし、今では彼も...”

 

次がロシアの将官の論考。元リンクはこちら。

russiandefpolicy.com

 

ロシアによるウクライナ戦争の行方について、Mikhail Khodarenok氏の記事が先週のNVOに掲載された。彼は知識が豊富で現実的な分析家だ。

 

彼の軍歴と参謀本部での勤務からしてロシアの愛国者である。しかし、彼は、クレムリンが聞きたくないが、聞く必要があることを言う人である。

 

Khodarenokは、ロシアが大幅に改良された軍隊を持ちながら、軍事行動に対して過信していることの危険性を指摘している。彼の記事は、米国が戦争を考えているときに多くの西側オブザーバーが書くものに似ている。しかし、ロシアでは、Khodarenokは孤独な声なのだ。

 

ウクライナとの戦争は、モスクワの傲慢さが示すように簡単なものではない、と彼は主張する。

 

プーチンが戦争に踏み切らないことを祈るばかりだ。しかし、もしそうなれば、プーチン自身にとっても、すべてが変わってしまう。彼は今、どのように変化するか想像もつかないだろう。

 

いずれにせよ、、Khodarenokのタイムリーな記事の翻訳を紹介する。

 

「血に飢えた識者たちの予言:歓喜する鷹と慌てるカッコウのように

最近、ロシアの専門家の間では、ウクライナの軍隊は哀れな状態なので、軍隊を投入する必要さえないだろう、という意見が十分に根付いている。

 

ロシアの強力な攻撃によって、監視・通信システム、大砲、戦車隊はほとんど破壊されるだろうと指摘する識者もいる。さらに、多くの専門家が、ロシアの一撃でもこのような戦争を終わらせるのに十分であると結論付けている。

 

さらに、ウクライナでは誰も「キエフ政権」を守ろうとしないという事実も、さまざまなアナリストが指摘している。

 

一筋縄ではいかない

まず、最後から始めよう。ウクライナでは誰も政権を守らないと断言するのは、隣国の軍事的・政治的状況や広範な大衆の気分について、実質的にまったく知識がないことを意味する。そして、隣国のモスクワに対する憎悪(よく知られているように、これは武力紛争の最も効果的な燃料である)の程度は、明らかに過小評価されているのである。ウクライナの誰も、パンや塩や花でロシア軍を迎え撃つことはないだろう。

 

2014年のウクライナ南東部の出来事は、誰にも何も教えていないようだ。それから、左岸のウクライナ全体が一挙に、秒速でノボロシア(新ロシア)になるとも考えているようだ。彼らはすでに地図を描き、将来の都市や地方行政のための人員配置を考え、州旗を作り上げている。

 

しかし、ウクライナのこの地域(ハリコフ、ザポロジェ、ドニエプロペトロフスクマリウポリなどの都市も含む)のロシア語を話す人々でさえ、同様の考えを圧倒的多数で支持していたわけではなかった。「ノボロシヤ」プロジェクトは、いつの間にか静かに萎み、静かに死んでいった。

 

一言で言えば、2022年に1939年の形と似通った解放十字軍をやっても、どうにもうまくいかないということだ1。この場合、ソ連文学の古典であるアルカディ・ゲイダルの言葉は、かつてないほど真実味を帯びている。"今は簡単な戦いはなく、困難な軍事キャンペーンになることは明らかだ"

 

「血をほとんど失わず、最大の一撃を」

さて、「ロシアの強力な攻撃」についてだが、「実質的にウクライナ空軍のすべての監視・通信システム、それに砲兵隊、戦車隊」が破壊されることを前提としている。

 

この表現一つをとっても、これは政治家しか、こんな言い方をしないことがわかる。参考までに、軍事作戦地域[TVD]規模の仮想的な軍事行動の過程では、優先目標への打撃と大量火器による攻撃が行われる。作戦戦略計画の過程では、「強力な」(「中程度の」、「弱い」なども)という形容詞は使われないことに注意。

 

軍事科学では、攻撃には戦略的なもの(これは戦略核戦力に関係する部分が多い)、作戦的なもの、戦術的なものがあることが強調されている。参加する軍隊と破壊される目標によって、攻撃は集団、グループ、個人のいずれにもなりうる。また、政治的な性格を持つ書類であっても、他の定義を導入したり使用したりしない方がよい。

 

優先目標への攻撃と大量集団砲撃は、戦線(ロシア西側国境の戦線はまだ形成されていない)または軍事作戦場の軍隊の主指揮部(南西部の戦略方向にもそのようなものはまだ確立されていない)の範囲内で行うことができる。これ以下の規模のものは、大量集団砲撃とは言えない。

 

そして、例えば、前線集団火力攻撃(MOU)とは何なのか。まず注目するのは、戦線の指揮官(作戦戦略上の大きな単位)が自由に使える最大数の戦闘準備部隊と航空、ミサイル部隊と砲兵、EWシステムの手段がMOUに組み込まれているかどうかだ。

MOUとは、航空機の1回の大量出撃、OTRミサイルおよびTRミサイルシステムの2-3回の発射、数回にわたる砲撃のことを言う。

これによって敵への火器破壊の程度が60〜70%であればよい。

ウクライナとの紛争に当てはめると、この問題の主旨どうなるのでしょうか。

 

言うまでもなく、MOUは敵の可能性が高い相手に大きな損失を与える。

 

しかし、たった1回の攻撃だけ行うことで、一つの国家全体の軍隊を粉砕するような攻撃を達成することを期待するということは、単純に戦闘作戦を計画し実施する過程で、抑制のきかない楽観主義が出現したことを意味する。

 

このような結果を達成するためにはMOUは、軍事作戦地域における仮想的な戦略的作戦の過程で、一度や二度ではなく、もっと頻繁に提供されなければならないのである。

 

ロシア連邦軍には、将来性のある高精度の兵器が、無制限に供給されているわけではないことを付け加えておく必要がある。

 

極超音速ミサイル "ツィルコン "はまだ兵器庫にない。また、「カリブル」(海上巡航ミサイル)、「キンザル」、Kh-101(空中発射巡航ミサイル)、「イスカンダル」用ミサイルの数量はせいぜい数百(「キンザル」の場合は数十)程度である。

 

この兵器庫は、人口4,000万人以上のフランス規模の国家を地球上から消し去るには全く不十分である。そして、ウクライナはまさにこのようなパラメータによって特徴づけられている。

 

制空権について

ロシアの専門家の間では、(特にドゥーエのドクトリン信奉者によって[注:イタリアの戦略爆撃理論家Giulio Douhet、1869-1930年])ウクライナでの仮定の戦闘作戦はロシアの完全な航空優勢下で行われるため、戦争は極めて短期間に終了すると主張されることがある。

 

しかし、1979年から1989年にかけての紛争で、アフガニスタンの反対派の武装組織は、一機の航空機も戦闘ヘリも持っていなかったことが、いつの間にか忘れ去られている。そして、この国の戦争は10年間も続いたのだ。チェチェン共和国の戦闘員は、飛行機を1機も持っていなかった。そして、彼らとの戦いは数年続き、連邦軍に多大な血と犠牲をもたらした。

 

そして、ウクライナ国軍には戦闘航空がある。防空装置ももっている。

 

実際、2008 年の紛争では、ウクライナの地対空ミサイル部隊(グルジア軍の一部として)がロシア空軍を大量に撃ち落とした。

戦闘開始後、ロシア軍の指導部は明らかにその損害にショックを受けていた。そして、このことを忘れてはならない。

 

前もって、喪に服す

さて、"ウクライナの軍隊は哀れな状態である "というテーゼについてだ。当然、ウクライナ軍は航空や近代的な防空システムという点では問題がある。しかし、次のことを認識しなければならない。

ウクライナ軍が2014年までソ連軍の断片を代表していたとすれば、この7年間で、まったく異なるイデオロギーの基盤の上に、大部分がNATOの基準で、質的に異なる軍隊がウクライナに作られた。そして、非常に近代的な武器や装備が、北大西洋同盟の多くの国からウクライナにもたらされ、今ももたらされ続けている。

ウクライナ軍の弱点である航空戦力について。西側諸国は、キエフの軍隊に自分たちが持っているもの、簡単に言えば中古の戦闘機を、十分に短期間で供給することができると言われているので、それを排除することはできない。しかし、それらの中古品は、ロシアの在庫の大半の航空機に完全に匹敵するものだろう。

もちろん、今日、ウクライナ軍は、戦闘と運用の可能性において、ロシア連邦軍に大きく遅れをとっている。このことは、東側でも西側でも、誰も疑っていない。

 

しかし、この軍隊を軽んじてはいけない。この点で、アレクサンドル・スヴォーロフの訓示を常に思い出すことが必要である。"敵を軽んじるな、自分より愚かで弱い存在と思うな "だ。

 

さて、西側諸国はウクライナのために一人の兵士も死なせないという主張について。

そうなる可能性が高いということを、私たちは知っておかなければならない。

しかし、ロシアが侵攻した場合、西側諸国がウクライナ軍に対して、最も多様な種類の武器や軍備、あらゆる種類の物資を大量に提供する大規模な支援を行う可能性を排除することはできない。

この点で、西側諸国はすでに前例のない強固な立場を示しているが、モスクワでは予想外だったようだ。

アメリカや北大西洋同盟諸国から、第二次世界大戦のときと同じように、生まれ変わったレンドリースが始まることを疑ってはいけない。西側諸国からのボランティアで戦闘員が参加すること、それも非常に多くなる可能性は排除できない。

 

パルチザンと地下抵抗者たち

そして最後に、長引くと予想される軍事作戦について。ロシアの専門家の間では、数時間、時には数十分で終わると言われている。その一方で、なぜか彼らは、我々がすでにこのようなことを経験していることを忘れている。2 時間でパラシュート連隊 1 つで都市を制圧する」というフレーズは、すでにこのジャンルの古典となっている[注:1994年にロシア軍がチェチェンの首都グロズヌイを簡単に占領できると元国防相Pavel Grachevが主張したことに言及。実際には、正月の不用意な攻撃で壊滅的な被害を受けた]

 

また、スターリンの強力なNKVDと数百万人のソ連軍が、西ウクライナ民族主義者の地下組織と10年以上も格闘してきたことも忘れてはならない。そして今、ウクライナ全土がパルチザンになる可能性があるのだ。さらに、これらの組織は簡単にロシアの領土で活動を開始することができる。

 

ウクライナの大都市における武力闘争は、一般に予測に適さない。武力紛争の弱者や装備が整っていない側にとって、大都市は最高の戦場であることは一般に知られている。

 

本当の専門家は、大都市では、数千、数万の戦闘員の集団を集中させるだけでなく、敵の優れた火力から守ることも可能であると指摘している。そしてまた、長期間にわたって物資を供給し、人や装備の損失を補充することもできる。山、森、ジャングルは、今日、そのような可能性を持っていない。

 

専門家は、都市環境は防衛側を助け、攻撃側の動きを鈍らせ、1平方メートルあたり最も多くの戦闘機を配置でき、戦力と技術の差を補うことができると確信している。しかし、ウクライナには、人口100万人の都市を含め、十分すぎるほどの大都市がある。したがって、ロシア軍は、ウクライナとの予想される戦争の過程で、一つのスターリングラードや一つのグロズヌイの経験をはるかに上回る戦いに直面することになる。

 

結論

一般的に言って、ウクライナでは電撃戦はありえないだろう。「ロシア軍は 30~40 分で ウクライナ軍のサブユニット11 の大部分を破壊する」「ロシアは本格的な戦争になれば 10 分でウクライナを破壊できる」「ロシアは 8 分でウクライナを破壊する」といった一部の専門家の発言は、まともな根拠がないものである。

そして最後に、最も重要なこと。今のウクライナとの武力衝突は、根本的にロシアの国益を満たさない。したがって、一部の興奮したロシアの専門家は、帽子を投げるような空想は忘れた方がいい。そして、これ以上のダメージを防ぐためにも、二度と彼らを呼ばないことである。」